ミス!?いけない?!

意味深なタイトルですが、人前で演奏する際にやる側も聞く側も「ミス=いけないこと」という固定観念に囚われ過ぎてしまうことがあると思うのですが、寧ろ逆にそれは危険だと思うのです。

ミスをするのはある意味当然です。
まして人前となれば、練習を沢山したからと言っても、集中も困難になりますし、緊張すると普段出来ていても思うようにいかないものです。

だから本番でいつも以上の演奏をすることには無理がありますし、
それでも、いつもと同じように演奏出来たらラッキーと思っても良い程です!

では何が不味いの!?
厳密に言うと、音楽は止めてはいけないということです。
例え音のない休符の際にも聞き手に時間という芸術が流れてますので、それを止める事は聞き手に違和感を与える恐れがあるので、出来る限りしないようにと指導しています。
でもミスはして当然ともいつも伝えてます。ミスしても先ず止まらないこと!それを引きずらず、乗り越える事、弾き切る事が重要と指導してます。ミスしたって、聞き手を感動させる演奏だって可能なのです!

ケンタッキー時代のYUMIE記念生徒のKarenちゃんが、1stグレードの時にフェスティバルで演奏した動画をシェアしたいと思います。




これは毎年恒例のキーボードフェスティバルで、筆記試験とバロックから必ず1曲と、あとは古典派かロマン派かモダン/現代の時代の作曲家の作品を弾くもので、最高評価(Superior rate)を貰った生徒にはメダルが授与されます。

大学の音楽堂で客席も多く、幼児から高校生迄の生徒達を大勢参加させましたが、皆それぞれ子供ながらに緊張したと思います。流石の(!?)Karenちゃんも緊張はした(見えないかもですが)ようです。

でも、本人にも親にも「Mistake万歳!」と常々言っていたせいもあり、ミス=奴がきた!と例えたりして、とにかく奴(ミス)に左右されないように乗り越える事が奏者として最も試されるのだという理解があったので、何処で間違えたうんぬんよりも、如何に上手く乗り越えられたか、諦めなかったかが重要でした。そして、ミスしても良い演奏は分かる人には通じるものですよね。それをミスを心配する事によって出せないのは残念ですし、聞き手もミス以外の事に耳を澄ませること=聞くセンス磨きをすると、もっと楽しめるものです。

実は、このフェスティバルでKarenちゃんはWinnerとなり、しかも最高評価まで貰えました。
審査委員からも、メヌエットで踊るステップが軽やかで楽しく、聞いてるこちらにもそれが伝わって楽しませてくれた優れたパフォーマンスでしたと書いてました。
彼女の体全体を使った表現、そして天真爛漫さ、彼女なりのメヌエットのイメージ、そしてピアノが好きで楽しい事、それらがミスを恐れる事でビクビクした演奏になり、薄れてしまう事を最も恐れました。

でも、本番ではその優先されるべき素晴らしい部分が出せたのと、ミスに動じずそれを最後迄やり通しましたので、Winnerになったことに疑問は全くありませんでした。
保護者は「何でミスしたのにWinnerだったの?」と思われちゃうのかな?と逆に気にしてましたが、本人が楽しんだ事、最後迄ミスがあっても延び延びとKarenちゃんらしさが出せて、諦めず演奏に集中出来た事が本当に嬉しかったようです。

これは正に自分が伝えたかった事を立証する良い機会ともなりました。

ピアノの先生同士での話で、ミスしなかったのに勝てなかった生徒がいて、親がそれに対して苦情を言ったりしてくるということを聞きますが、自分は実は今迄に一度もミスしなかったのに勝てなかった!という苦情はありませんでした。

寧ろ、逆にKarenちゃんのように、ミスしても入賞出来た生徒も結構いたくらいです。
それで更に「ミスしない事が全てではない」という事を実感出来たようです。

ついでにソナチネ・コンペの際のYUMIE記念生徒のKihoちゃん(11歳になったばかりの頃)の動画もシェアします。
通常、コンペティションなるものの写真撮影及び動画撮りは禁止されてますが、紹介した2つの動画は、フェスティバルのルールには撮影禁止がないものでした。

2人に共通してるのは、ミスしても止まらず、常に今出してる音に集中してる部分ですね。

オレゴンでは今のところノーミスの生徒が入賞出来てる感じなので、これがたまたまであったら良いなと思ってます。
勿論、コンペの結果は全てではないので、あまり左右されないことも大切なのは言うまでもないですが、ミスしても勝てた例を紹介しました。

ミスしても良い演奏というのがあるということを、やる側も聞く側も認識出来ることは大切なことだと思います。

6月の発表会(Summer Home Concert 2016)がもう直ぐですが、やる側も聞く側も、この事を念頭に置いて、より一層楽しめますように♪